私は「ホラーが苦手」という自認がある。
あくまで自分自身そう思っているだけで、周囲の人たちから見れば恐らくそんなことはなく、なんだったら「ホラーが好きな人」と思われている可能性も大いにある。
ホラーが苦手、だけど怖いもの見たさで2ちゃんねるの有名な怖い話だとか、ホラーゲームだとかをプレイしてしまう。苦手だけど好きなのだと思う。
私はインターネットが好きである。
インターネットという空間で築き上げられてきた独特な文化が大好きだ。上記でも話題に挙げている2ちゃんねるやネットミーム、その他様々。
知識が豊富という訳では決して無い。言ってしまえばにわかではあるけれど、それでもこの人生において「私」を形成してきたものはインターネットである。
2024年4月22日から展開されていたコンテンツ、「つねにすでに」。
先日1周年を迎えておめでたいなあと思ったので、勢いに任せて「好きだ……」という話をします。
誤字脱字の確認はしたつもりですが、かなり勢い任せに書いているので文法や表現が不適切かもしれません。
つねにすでには
1周年を迎えました pic.twitter.com/rYdD94WV3G— つねにすでに (@always__already) April 22, 2025
“好きだ”という勢い任せの話をする前に、先ずはこのコンテンツについて簡単に紹介させてください。
ホラー作家である梨さんと株式会社 闇によるホラープロジェクトで、上述した通り2024年4月22日からWeb上で公開がはじまりました。
AからZまでのアルファベット順に、様々な形式で短編が展開されていきます。
ゆっくりを使用した話、一見よくあるアフィリエイトブログのスクリーンショットから広がる話、チャットアプリdiscordを舞台とした話……最初の3話だけでも非常にバリエーションに富んでいて、更新の度にドキドキしていました。
現在は書籍版も出ており、そちらには書き下ろしも収録されています。ただ、基本的には全てWeb上で閲覧可能で、Web上で見るからこその旨味も大いにあるコンテンツだと思っています。
もしまだ見たことがない方は是非見てみてください。不気味、不穏な印象がずうっと続きますが、露骨なジャンプスケアやグロテスクな表現は含まれておりません。
外部リンク:https://always-already.net/
正直なことを言うと、思うところが全く無いかと言えば嘘になる。
手放しに持ち上げることが出来るかと問われたら、色々と言いたいことがある。
たとえば「アルファベット順に怖い話が公開されていくのだろう」と考えて、ある程度出そろってからまとめて読もうと思っていたのは、恐らく私だけではないと思う。実際に周囲にも同じような人はいた。
だけど、そんな風に考えていた人たちをまるで切り捨てるように、それまでに公開されていた作品が、ある日突然すべて非公開になった。
勿論それは「そういう演出」で、少ししてから再公開されたけど、非公開になった時は本当に後悔した。
そして、再公開後には、「非公開前のものと内容が少し違っている」という話を見かけて、また後悔した。
それ以外にも、「Utopia / メアリーの部屋」という話はリアルイベントの形が取られていたのだけど、「仕事をしていたばかりに、ページを確認できる頃には定員がいっぱいで応募できなかった。」という方を何人も見かけた。
このイベントに行くには様々な、しかも高難易度の謎解きをしなければいけなかったのだけれど、「Kidnappers / 育ての親」にて公開されていたdiscordサーバーで、有志の方々が意見交換等をして答えに行きついていた。集合知ってこういうことなんだなあとちょっと思っていた。
そうやって謎解きに参加して、明確に参加資格足る情報に行きつけただろうに、タイミングの悪さで現地に赴けない……といった人が居たのは、やっぱりちょっと悲しいなと感じた。
「つねにすでに」は、受け手であるこちらに様々なものを強いてくるコンテンツだったと思う。
そう感じてしまったのは紛れもなく事実だし、この気持ちを覆すつもりは無い。
それでも、この感情を含めて「つねにすでに」という作品は構築されていたのだとも思う。
廃墟みたいになってしまった同人サイトから繋がっていたリンク切れのバナーだったり、pixivの削除された思い出せないあの空白であったり、いくら探しても見つからず消されてしまったのかと推測する動画であったり。
かつて存在していた何かが消えて、記憶の中に存在だけがこびりつく感覚。これがあったからこそ、私は「つねにすでに」というコンテンツがここまで好きなんじゃないかと考える。
ノスタルジーにしがみつく人間は、私を含めて決して少なくない筈だ。
少しお気持ちのような話をしてしまったのでちゃんと「好き」の話をしていきたいと思ったのだけど、正直な話、「これが一番好き」という紹介が個人的に難しい。
確かに短編ホラー集ではあるのだろうけど、それ以上に私には全体を通して”ひとつの体験”として強く印象づけられているからだ。
ホラーとして好きな話は勿論ある。
「Experiments / 幽霊を見る実験」の、最後の突き落とされるような言葉がすごく好きだったり。
「Found / 特定しました」を見ると、2ちゃんねるのスレッド形式ってやっぱり良いものだな……と思うし。
「Lostandfound / 探しています」は不気味なチラシってすごくソワソワドキドキしてしまうな……という感覚。
「Oracle / 聖地巡礼」の最後の画像を見て、「ああ、」と気付く瞬間のぞわぞわした感情。
「Supplice / 断頭台への行進」から想像するむず痒さ、そして以前の話に出たワードが回収されて納得する気持ち良さ。
ひとつひとつ見て行っても、ああやっぱり良いな……と思う。
ただ、そういったアルファベットが終息に向かう中での、「Yahoo / お節介な神託」。最終話であろう「Z」の直前。
これでもかと詰め込まれた大量のインターネットカルチャー。スラング等が次から次へと流れて繋がっていく様は、ホラーというよりもあの頃のインターネットを通した夢の終わりを見ているようだった。
discordサーバーの盛り上がりも含めて、まるで2ちゃんねるの”祭り”のようなあの熱狂がとても嬉しくて、少しだけ寂しかった。
公式Twitterアカウントの書籍版の紹介ツイートにて「インターネットを愛する全ての人に贈るラブレター。」と書かれていたが、この言葉は本当にその通りだと思う。
汚くて、こわくて、それでもなんだかキラキラして見える。幼い頃の私が見たインターネットとは、確かにそんな存在だった。
200万PV突破のネットロア、書籍化。
「ネットホラーの集大成」
「あの『行方不明展』の作家・梨の真骨頂」
「ホラーの域を超えた、壮大な〝祭り〟だ」インターネットを愛する全ての人に贈るラブレター。
梨/闇『つねにすでに』
— つねにすでに (@always__already) January 23, 2025
書きなれない文章を勢いに任せて長々と書いてしまいましたが、これはひとりのインターネットの住人としての感想です。
ホラーが好きな人、ネット文化が好きな人、あの頃のインターネットを記憶している人も、そうじゃない人も。
このコンテンツが誰かの記憶の片隅にふと残るようなものだったなら。私はただの一ファンでしかありませんが、なんだか嬉しいなって思います。
インターネット最高!
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